樋口活介公認会計士事務所  医療法人会計監査スペシャリスト

医療法人会計監査スペシャリスト

監査費用は安ければ安いほどよいのか?

      2016/08/25

おそらく、ほとんどの社会福祉法人の方は、本音を言えば公認会計士監査などお金もかかるし面倒だから受けたくないのではないでしょうか。

 

もちろん、公認会計士の立場から言えば監査を受けて頂くメリットはあります。

・財務諸表の信頼性が増すことで、金融機関等からの与信が高まる

・不正や誤りが起こりにくいより強固な内部管理体制を構築できる

・会計処理等について専門家からアドバイスを受けられる

などなどです。

 

しかし、そうは入っても、会計監査はお金のかかる厄介なもの、とにかく安ければ安い方が良いと思われるかもしれません。

確かに形式的に考えれば、監査費用を多く払おうと少なく済ませようと、監査を受けた結果として受け取るのは、財務諸表が適正であると認めた監査報告書だけです(もちろん財務諸表に大きな誤りや不正があれば不適正意見が出されます)。

 

お気持ちはよくわかります。

 

しかし、何でもそうですが、値段はただついていません。

その値段にあったサービスが提供されます。

もちろん必要以上に多く払う必要は決してありませんが、物事には適正価格があります。

 

例えば、通常500万円する車を購入しようとしたときに、50万円ですと言われたら購入するでしょうか。

もちろん、親しい友人からアフリカに転勤になっていつ帰ってくるかわからないし、輸送費用もバカにならないから大事な車を大切に乗ってくれるなら安く譲りたいんだと言われるなど、理由が納得できるものであれば購入するかもしれませんが、よほど特殊な事情が無い限り、きっとひどい事故車であるなど何か裏があると思い、購入することはないのではないでしょうか。

 

監査も同じなのです。

 

自動車と違って適正価格がいくらなのかわかりにくいかもしれませんし、自動車と違って安くても監査報告書さえきちんと出してくれれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

 

例えば、サービス活動収益が10億円程度の社会福祉法人の例を考えてみましょう。

サービス活動収益が10億円程度であれば、比較的安価な公認会計士事務所であっても適切な監査を実施するには少なくとも200万円前後の費用は発生してしまうと思います。

この時に、180万円位の見積りを出す公認会計士事務所があれば、それは企業努力の範囲内かもしれません。

しかし、50万円とか70万円等の見積りが出ることは、ほぼありえないことです。

 

万が一そのような見積りがあった場合、それは残念なことですが、

①経験の浅い若手スタッフばかりを使う

②監査に時間をかけずいいかげんな監査を行う

③とにかく仕事がなく食べていけないので、どんな低価格でも仕事を請け負う

のいずれかのケースに該当すると思われます。

 

それでもいいからとにかく安く済ませたい場合には、それらの公認会計士事務所と契約することもありかもしれません。

 

念のため、弊害を記載しておくと、①、②の場合は適正な監査が行われません。

社会福祉法人の監査は法律でその実施が義務付けられる法定監査になりますので、適正な監査が行われていなかった場合は、その監査を実施した公認会計士事務所が処分されるだけでなく、過年度に遡って監査のやり直しが求められたり、その後行政からの指導が必要以上に入るという可能性も考えられますし、監査を受けているにも関わらずいい加減(不十分)な監査のせいで銀行からの信用も失われてしまうかもしれません。

また、①の場合は、必要な監査手続きを実施できなかったり、不必要な手続きを実施してしまうなど、監査の対応をする法人職員の手間が煩雑になる可能性もあります。

 

監査費用も適当についているわけではありません。

自動車など他のものと同様に安ければやすいなりの、高ければ高いなりの理由があります。

 

サービス活動収益が10億円程度の社会福祉法人であれば、

概ね200万円程度が、

比較的低額でありながらも適正な監査が実施できる金額だと思われます。

50万円という金額もまずありえませんし、500万円という金額も高すぎると思います(但し、大手の監査法人の場合は500万円もあり得ます)。

 

 

 - 社会福祉法人の監査