公認会計士しか知らない監査の秘密①
2016/08/25
精査ではなく、試査で監査を実施することで、チェックしなかったところで誤りがあったらどうするのでしょうか?
監査上はこう考えます。
それは、仕方ない。
精査をすることが現実的でない以上、重要でない誤りはあっても仕方ないと考えます。
決算書を一円単位で正確に検証することは、ある意味決算書を作成するよりも大変なことなので、重大な誤りがないことを検証すればOKと考えるのです。
言い換えると、監査を経済的に効率的に実施する観点から、
決算書を見る銀行や得意先の人、行政(利害関係者と言います)の意思決定に重要な影響を与えない誤りは許容されているのです。
本当は10億円の売上を20億円だと記載したら、これは重大な誤りで利害関係者の意思決定に影響を及ぼすけど、10億円の売上を10億100円と記載していても利害関係者の意思決定に何の影響もないでしょうということです。
それを端的に表しているのが、監査が終了した時に監査人から経営者宛に提出される監査報告書の文言です。
その監査意見の欄にはこう記載されます(わかりやすさのため、一部簡略化しています)。
「私(筆者注:公認会計士のこと)は、財務諸表が、財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める。」
そうです。
ポイントは、
すべての重要な点において
というフレーズです。
重要な点についてはすべて確認したけれども、試査で監査しているので重要でない点については適正かどうかわかりませんということです(監査報告書にはそこまではっきりと記載しませんが)。
では、重要か重要でないかは誰がどう決めるのでしょうか?
一言で言うと、監査をする公認会計士が主に金額的な観点から決めます。
公認会計士は、監査を実施する際に重要性の基準値というものを決めます。
この重要性の基準値というものは、この金額以上の誤りが発見され、それを修正しない場合には、財務諸表がもはや適正だとは言えないという金額のことです。
つまり、この金額未満の誤りについては、(発見した以上、公認会計士は基本的に修正を依頼しますが、)仮に修正をしなくても重要な点に誤りはない=適正だというお墨付きを与えることになります。