樋口活介公認会計士事務所  医療法人会計監査スペシャリスト

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公認会計士と監査法人の違い②

      2017/10/26

前回の"公認会計士と監査法人の違い①"に引き続き、公認会計士の具体的役割について見ていきます。

 

 

1.公認会計士は、監査及び会計の専門家です

公認会計士は、「監査」の専門家です。

 

ここでいう「監査」とは、社会福祉法人に対して行政が行う法人監査や施設監査など、業務が適正に行われているかの監査ではなく、会計処理が適切に行われ、法人の実態が適切に財務書類に反映されているかを確認する会計監査のことを意味しています。そして会計監査の専門家として会計の監査をするので、当然に会計の専門家でもあるのです。

 

公認会計士の大多数は、上場企業などの大企業に対してこの会計監査を行っています。

 

 

 

2.「独立した立場」において

公認会計士は、監査を受ける会社や法人のみならず、何人からも独立した立場で業務を実施します。

 

公認会計士が保持すべき独立性は2種類あると言われています。

その2つとは、外観的独立性と精神的独立性の2つです。

簡潔に言うと外観的独立性とは、監査を受ける会社や法人等の事業体と特定の利害関係を持たないことはもちろんのこと、その疑いを招くような外観を呈さないことを言います。そして、精神的独立性とは、監査の実施に当たって公正不偏の態度を保持するということを意味します。

 

 

一つ例を挙げましょう。

例えば、ある医療法人の監査を実施する公認会計士が、その医療法人の理事長の子供であったり、あるいは理事長から高額の贈答品を受け取ったりしていたらどうでしょうか。

 

公認会計士も人間ですから、自分の親が理事長を務める法人であったり、高額な贈り物をもらっている法人だと、監査に手心を加えてあげようという気持ちがわかないとも限りません。

そして実際に、本来適正でないと指摘すべき会計処理についても見逃して適正であると報告してしまうかもしれません。

 

これは、もはや監査に当たって公正不偏の態度が保持されているとはいえませんので、精神的独立性が害されている状態となります。

つまり、精神的独立性が害されていると監査は失敗であり、意味がないだけでなく、適正でないものを適正であるとお墨付きを与えるわけですから、社会にとって有害ですらあるのです。

 

一方で、外観的独立性は害されていても、直ちに監査が失敗するわけではありません。

 

なぜなら、たとえ自分の親が理事長を務める法人であったり、高額な贈り物をもらっている法人であったとしても(これは外観的独立性が害されている状態です)、精神的独立性が害されずに公正不偏の態度を保持して監査を実施していれば、不適正なものは不適正であると報告できるからです。

 

しかし、外観的独立性が害されて高額な贈り物をもらっているような公認会計士が監査をして提出した監査報告書を第三者は信頼できるでしょうか?

 

手心を加えることなく適正に監査を実施して監査報告書を提出しているかもしれませんが、第三者からすると手心を加えているのではないかと言う疑念がわきますよね?

 

また、高額の贈り物を受けたりするなど外観的独立性が害されると精神的独立性が害される可能性が高まることから、精神的独立性を担保するために、外観的独立性を保持することが公認会計士には求められており、公認会計士は監査を実施する会社や法人等の事業体とは常に一定の距離を保ち、独立した立場で監査を行います(もちろん、仲が悪いというわけではありませんので、割り勘で飲みに行くことがないわけではありません)。

 

 

 

3.財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保します

医療法人が作成する財務諸表等について情報の信頼性(法人の経営の内容を正しく表していること)を公認会計士が監査を通じて付与することを意味します。

 

財務諸表は、1年間のその法人の活動の結果を数字として表す書類であり、誤解を恐れずに言えば成績表のようなものです。

自分で自分の財務書類を作成することは、学生が自分の成績表を自分でつけることにも似ています。

 

自分で成績表をつけるとどうでしょうか?どうしてもちょっと自分に甘くつけたくなったりしませんか?自分でつけた成績表はきっと他人には信用してもらえないですよね。

自分で作成した財務諸表を独立性を持った専門家が保証することで、はじめてその財務諸表は対外的に信用性を付与されるのです。

 

 

 

4.会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図ります

公認会計士は、監査を通じて、「会社等」における不正の発見等により公正な事業活動を図ることを意味しています。

 

「会社等」とは私企業に限られるのではなく、学校法人、公益法人、公会計の対象となる事業体なども含まれており、平成29年4月2日からは医療法人や社会医療法人もその対象となるということです。

 

全ての医療法人は、掛けで何らかのモノを仕入れたりサービスの提供を受けているでしょうし、ほとんどの法人が金融機関から借り入れをされていることでしょう。

そういった債権者達は法人の事業活動の状況を自分で調べることはできませんが、公認会計士が第三者として独立の立場から監査をすることで、債権者は安心して法人との取引を継続することができるのです。

 

また社会医療法人は公益目的が高いために税の優遇が図れているため、一般企業以上に公正な事業活動が求められており、公認会計士による監査を通じてそれを証明していくことが求められていると言えます。

 

 

 

5.国民経済の健全な発展に寄与することを使命とします

公認会計士が監査証明という公共性の高い業務を行うことを主な業務としていることによって、企業や法人等の財務状況や経営状態を示す財務書類の正確性が担保されることになります。

 

投資家や債権者が安心して取引できるということは、最終的には国民経済全体の健全な発展に貢献することであり、公認会計士の存在が「公共の利益の擁護」に貢献するという意味も含んでいます。

 

 

 

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