どこも結局同じなのではないですか?
主に聞かれる内容を5つの視点からお答えします。
1.監査手続
元々監査は上場企業に対して実施されてきた歴史があります。
上場企業には、医療法人とは異なり株主等多くの利害関係者がおり、それら利害関係者を保護するためにより厳格な監査手続きが求められています。
大手の監査法人では、この上場企業に対する監査をベースに、必ず実施すべき監査手続きが事細かにマニュアル化されています。
このマニュアルは、「きちんと監査をしていなかったのではないか?」と株主から訴訟を起こされた際に敗訴しないためという目的も暗に含まれるため、
大手の監査法人では、より厳格な多くの監査手続きを実施し、それを子細まで文書化しておく必要があります。
医療法人の監査においてもこのマニュアルの大部分が適用されることが多いため、個人の公認会計士事務所よりも監査手続きの量がかなり多くなっています。
個人の公認会計士事務所が甘い監査をするわけではありませんが、相対的に手続きの量は大手の監査法人の方が多くなります。
2.費用
監査費用は、大雑把に言えば、
会計士の時間単価×工数
で決まります。
会計士の時間単価は、大まかな業界標準*がありますので、基本的には作業の量が増加すればそれに比例して監査費用も高額になります。
上記のように大手の監査法人では、個人の公認会計士事務所よりも作業量が多くなるため、必然的に費用も高額となります。
また、大手の監査法人では一等地に大規模なオフィスを構え、パートナーと呼ばれる監査責任者には秘書がつくため、その分のコストが上乗せされます。
*業界標準については、こちらの記事をご参照ください。
http://hk-cpa.jp/監査費用の相場を知りたい方に/
3.医療法人の職員の負荷
監査人の監査手続きが増加すれば、結果として対応する医療法人の職員の方の負荷も増加
することになります。
従って、監査人がマニュアルに従って上場企業並みに厳格な監査を実施すればするほど、対応する職員の業務負荷も増加することになります。
また、担当する会計士が必ずしも病院経営に詳しくなければ(ほとんどの会計士は一般企業に対する監査しかしたことがありません)、
病院の監査における監査リスクを見極めて効率的な監査を実施することが困難となります。
その結果、本来不必要な監査手続きを実施したり資料を依頼することとなり、それも職員の負荷が増加する原因となります。
もっとも、この点は規模は関係なく、担当する会計士がどれほど医療法人の監査経験があるかによります。
4.成果物
監査の目的は、
医療法人の決算書が正しく作成されているかどうかについて意見を述べること
にあり、それ自体はどこの監査人が監査しても変わりはありません。
そして、最終的に提出される監査報告書は、日本公認会計士協会が公表しているひな形に準拠して作成されますので、監査人の名称以外の部分に違いはありません。
従って、最終的な成果物としては、大手の監査法人であっても個人の公認会計士であっても差異はありません。
5.信用力
大手の監査法人であっても個人の公認会計士であっても基本的に差異はありません。
少し前に問題となった東芝の監査は大手の監査法人が担当していたように、誰もが知っている大規模な監査法人だから信用力が高いかと言えば、必ずしもそうとは言えないかもしれません。
適切に監査を実施しているか否かは規模とはあまり関係が無いように思います。
自分が公認会計士事務所を経営しているから言うわけではなく、
医療法人に関して言えば、
医業収益が1,000億円を超過するような超巨大医療法人でなければ、大手監査法人に依頼するメリットはあまり多くないと思います。
もちろん、上場企業であれば大手監査法人に依頼するのが良いと思います。