監査手続きの実施
2017/10/27
立案した監査計画に基づいて、具体的な監査手続を行っていきます。
通常、公認会計士監査は単独ではなく、複数人のチームを組んで行われます。
巨大企業の監査にもなると、百名を超える公認会計士でチームを組む場合もありますが、医療法人の監査の場合は、余程大規模な法人を除き通常2人~5人程度で実施されることでしょう。
監査チームのメンバーである各会計士には、監査責任者から担当部分を割り振られます。
「固定資産」や「販管費」などの勘定科目ごとに担当者が決められ、実査・立会・確認・分析などといった監査手続を実施して、監査意見を形成するための監査証拠を積み上げていきます。
実査:資産の実在性を確かめるために、公認会計士が現物を実際に確かめる監査手続。
現金、受取手形、株券などの資産が、帳簿どおりに実在するかどうか実際に目で見て、数を数えて確かめる方法のことです。
立会:棚卸資産(商品・製品・原材料・仕掛品など)を有する法人では、年度末に倉庫などに保管されている棚卸資産の数量を数え、帳簿の記録と一致しているかどうかを確認していると思います。
法人が行う実地棚卸の現場に監査人が同席し、その実施状況を視察、あるいは一部について実際に監査人自身がカウントすることによって、在庫数量の妥当性を確かめることです。
確認:法人の取引先等の第三者に対し借入金の残高などについて、監査人が直接、文書で問い合わせを行い、その回答を入手して評価する手続のことです。
【監査意見の形成】
各メンバーが自分の担当する部分において誤りや不正などがないと確信できるところまで調べがつくと、自分の行った監査業務の過程を監査調書として記録し、監査の責任者がその報告書の内容を確認します。
監査の責任者は、監査チームの各メンバーからの報告をまとめて相互の関連性や整合性を見ながら、全体としての正しさを検討します。
監査責任者は疑問に思う点を、各メンバーや直接法人の経営者・担当者にヒアリングしたり、自ら証拠調べを行いながら、最終的に正しいかどうかを検討して、監査チームとしての意見を形成します。
【審査と監査報告書の作成】
監査チームが出した結論を、その監査に関与していない別の公認会計士が客観的な視点で審査をします。
監査現場を見ていない審査担当は、監査責任者から監査意見形成の過程の説明を受け、監査調書を査閲し、その判断が適切かどうかを客観的に判断します。
審査が通らない場合は、監査チームは、審査で指摘された事項について追加の監査手続きを実施していくことになります。
このような長い過程を経て、公認会計士監査の報告書は作られます。
監査報告書は監査責任者が自筆でサインして、監査した医療法人の理事会宛に提出します。
監査報告書を受け取った法人は、財務諸表にこの監査報告書を付けて、自らが作成した財務諸表に誤りがないことを証明することになります。