医療法人に精通した公認会計士を選ぶべき3つの理由
2017/10/31
別に医療法人に精通した公認会計士でなくても、いいのではないかと思われるかもしれません。
会計監査人の要件として法律で定められているのは、医療法人に精通した公認会計士ではなく公認会計士という条件だけですから、もちろんそれでも構わないと思います。
しかし、
医療法人側のメリットを考慮すると、
医療法人に精通した公認会計士と契約することをお勧めします。
よく言われる例えですが、先生方に専門があるように公認会計士にも得意不得意があります。
耳鼻科の先生は心臓の手術をしません。
釈迦に説法ですが、耳鼻科の医師が心臓の手術をすることに法律上の問題はありませんが、そんな事例はまずありえないと思います。
公認会計士も似たようなところがあります。
ほとんどの公認会計士は一般企業を主要な顧客としています。
従って、これまで医療法人に対して何らかの会計・税務・コンサルティング業務を提供したことがなく、そもそも医療法人と社会医療法人がどう違うのかよくわかっていないという公認会計士が99%です。
もっとも、公認会計士の資格というのは、広く世間に大きな影響がある上場企業や大企業の決算が適正に組まれているかを確認してお墨付きを与えるために制度化された資格ですので、それは当然のことです。
監査というと決算書の数字だけを見るように思われるかもしれませんが、決算書の数字は1年間の事業活動の結果の集大成であり、その数字が正しいかどうかを確認するためには、事業活動そのものに対する深い理解が必須となります。
おそらく、日本の公認会計士の99%は医療法人(監査対象とならないクリニックや小規模の病院を除く)に対して専門家として業務を提供したことがありません。
従って、そのような医療法人に精通していない公認会計士が医療法人の監査を行うことに法律上の問題は全くありませんが、実際にそのようなことが起こると、病院の業務活動を理解するための時間が大幅に増大するため、監査時間が増加します。
そのことによるデメリットは3つです。
①監査に対応するための社会福祉法人側の準備や時間が増加する
②監査費用が増加する
③適切な監査が実施されない可能性が高くなる
医療法人側や医療法人に精通した公認会計士にとっては常識であったり、当然のことなども確認されたりするなど、監査対応の手間も多く取られることになるかもしれません。
また、監査に時間がかかるということは、それだけ公認会計士の人件費がかさみ、監査費用が高くなるということでもあります。
監査の結果として提出される監査報告書に違いはありませんので、信頼ができ比較的低額で監査を実施してくれる公認会計士であれば医療法人に精通していなくてもいいかもしれません。
しかし、法人の事業(病院のこと)をよく理解している公認会計士に依頼する方が、効率的に必要十分な監査を比較的低額で実施してもらえる確率はより高まると言えます。
このような事情から、
法律的にはどちらでも良いが、医療法人に精通した公認会計士の方がメリットは多い
と思います。
逆に言うと、医療法人に詳しくない公認会計士に監査を依頼するとデメリットが多いとも言えます。